今回とりあげるスクワットという運動は、トレーニングに詳しくない方でも雑誌、ネット、TVなど、どこかで1度はやり方をみたり、実際にご自身でやったことがあるのではないでしょうか?
膝をつま先より前に出さない!
そうした情報の多くで「膝をつま先より前に出さない」という表現が使われているようです。
メディアだけではなく、スポーツクラブやジムでもそのような指導を受けられた方もみえると思います。そしてスクワットをご自身でおこなっている方のなかには、その通りにできているのか不安になったことがある人も少なくないように思います。
でも「膝をつま先より前に出さない」は本当に適切なフォームで実施するため気に仕方でしょうか?
今回の記事の中では次ぎの点を順に書きます。
- 膝とつま先のような説明の不親切さと問題点
- 適切だと考える方法
- 運動のやり方に接したときに、不安にならずに情報を自分のものとして活用する考え方。(こちらは別記事に)
「膝とつま先」のような説明の不親切さと問題点
膝に悪いスクワットになっているときに生じる「よくある状況」を示しているだけ
このような表現は、どのように気をつけておこなうかではなく、やって欲しくない動作の結果、生じる可能性のある身体の状況を示しているだけだからです。つま先を基準し、それに対して膝が出ないという表現も理由がわかりません。
膝を視点にいろいろ書かれている背景を推測する
スクワットが適切なフォームでおこなわれていない場合、生じる可能性がある問題の1つが、膝に不要な負担をかけることです。ですから指導をさせていだく側は、膝に不要な負担をかけるようなフォームにならないように、どのようなアドバイスをしたらよいのかを考える必要があります。
そのアドバイスの1つとして、今回とりあげる「膝をつま先より~」が広まったと考えられます。そのような推測を元に「膝に悪くない」スクワットをおこなうためのアドバイスとして適切かを考えてみます。
「膝とつま先」のような指示はおこなう人のことを考えたものではないのでは?
この指示には2つの問題があると考えます。
- 身体の部位の長さやバランスなどの個人差を考えていない
- どうやれば良いか(具体的な方法)を知りたい、運動をする人の視点から考えていない
身体の部位ごとの大きさ(長さ)は人によって違う
まじめな方ほど細かいところを気にされると思います。
ですがそのような方にこのような具体的な目安だけあって根拠が分からない指示は、できているのかを不安にさせるだけでよいものだとは考えられません。
例えば足のサイズが小さかったら
上の画像の場合でも、足が小さかったら画像のようにお尻を後ろに突き出しても、膝とつま先はぎりぎりくらいになってしまうかもしれません。その状況でスクワットをしている本人が上からみて確認すると、つま先より膝がでているように見えると思います。
膝から上(太腿の部分)が長ければ難しく、左右の足幅でも調整できる
膝から上の太腿の部分が長い人はお尻を引くことが、長くない人より膝を基準にすると困難になります。そういった場合に、「膝がつま先より前だから」そのことだけで、その人のフォームをみることは不適切だと思いませんか?また足の左右の幅を変えることでもこの関係は調整できます。でもそれについて触れず、とにかく”膝とつま先”というのは、実際におこなう立場の人のことを何も考えていないように思えてしまいます。
できるようになってもらうではなく、何か指導をした気になれる言葉
身体の部位をとりだして、その位置関係で説明することは分かりやすいので便利かもしれません。でもそれは説明する側の都合のような気がします。やってはいけないことだけを伝えるのはある意味すごく簡単です。そして、その指示の内容が具体的であれば、簡単に覚えられるし、なんだか説得力もあるのではないでしょうか。
「膝をつま先より前にだすな!」
誰が言い出したのかは知りませんし悪意はないとは思います。でも、「なぜ?」という視点をもたない、指導する側が簡単に注意点のようなものを伝えているという点を満たす以外の価値がない指示だと考えます。指導する側に求められるのは、できていないことの指摘ではなく、できるようになるにはどうするかのハズです。
こんな指示には振り回される必要はありません!
では、どのようにおこなえば良いかを考えてみます。
スクワットを適切におこなうための方法をシンプルに考えてみる
「膝とつま先」は忘れて、膝に不要な負担をかけない適切なスクワットをおこなうための方法をシンプルに考えてみましょう。
最初にお尻を後ろにひく
膝がツマ先の前とか後ろとか気にするのはやめましょう。
横から見たときに、気にして欲しいのは膝ではなく脚を肩幅くらいに左右にひらいたら、最初から座ろうとせずに、画像のようにお尻を後ろにつきだし、腰や背中をすっと伸ばしてたままキープしてください。踵に重心が移ると思います。
重心を踵に保ったまましゃがむ
お尻を後ろに引きながら下へ降ろしていきます。踵に重心を保てているか感じてください。
このようにしていただければ、大丈夫です。
そしてあえて書きますと、
この画像の場合、お尻を引くことを気にし”結果的”に膝がつま先より前にでていないと見てください。
このような順番で確実にできていれば、膝に不用な負担をかける悪いスクワットにはなりません。(読んでその通りにおこなったつもりでもできていないというケースもおこりえます。もしおこなって違和感などが生じてしまった場合は無理しておこなわないでください。そして申し訳ありませんが対面で指導をさせていただかない限りその改善点などは分かりません)
上の画像では、太腿がほぼ床と平行な位置までお尻を下げましたが、最初はお尻を引いて背中と腰を伸ばしたまま(上半身の角度は極端に前傾しないように)降りることができる範囲からはじめれば良いです。
後ろに転んでしまいそうで怖い場合は、イスを後ろに置いてもよいですし、座ったところから始める方法などもあります。
難しい場合はスクワットにこだわらない
ここまで書いてなんですが、スクワットは適切におこなえばよい運動ですが、それが出来ない場合は膝や腰に不要な負担が生じる可能性がある運動です。適切なフォームで実施するたまの最低限必要な柔軟性と筋力がないと、どう頑張ってもできないかもしれません。
そのような場合は、最初はスクワットに拘らないで出来る運動から始めることのほうが、無駄な努力をしないですみます。「スクワット風の運動」であれば誰でも簡単にできますが、適切となると最初からできなくても不思議ではない運動なので、できなくても仕方がないと思っていただいたほうが良いです。
ですから、
- お尻を引くの意味が分からない、引けない人
- 踵に移動が重心ができない、分からない人
- どのくらいとは書けないのですが、過度に上半身を前傾させないとできない人
このような方は、自力で無理におこなわずに、適切な指導ができる方に見ていただいたほうがよいかと思います。
トレーニングの本当の目的はそもそもスクワットではないのでは
スクワットに限りませんが、多くの方はトレーニングする上で運動の種類に拘る必要はありませんよね?トレーニングをおこなうことの目的は、体力の向上などであって、その手段が運動なのではないでしょうか。ですから運動の種類にこだわらずに、適切な運動を選ぶことも大切かと思います。
まとめ
いろいろなところで目にする運動の方法は、本当にできるようになって欲しいという視点が欠落していると思える場合があります。運動の方法を他の人に対面ではなく伝えるのは非常に難しいことです。(このブログではパーソナルトレーニングを受けようと考えている人の全ての方に運動の方法をリスクなく伝えることは、私はできないと考えているので運動の方法について触れることは今後もありません)